「来週から遠隔臨場で段階確認をお願いします」と発注者から言われたものの、何を用意すればよいのか分からない。カメラはスマートフォンで足りるのか、Web会議システムは普段使っているもので構わないのか、発注者側のパソコンでも映るのか――遠隔臨場を初めて担当する現場では、制度の概要より先に、こうした「仕組み」の疑問にぶつかります。 この記事では、「臨場」「現場臨場」「遠隔臨場」という言葉の違いを整理したうえで、遠隔臨場を構成する機器と通信の仕組み、発注者側の環境で注意したい点、映像だけで確認しきれないときの扱いまで、受注者の担当者が準備の段階で知っておきたいポイントを解説します。
遠隔臨場の仕組みとは、現場で撮影した映像と音声を、通信回線とWeb会議システムなどを通じて発注者のもとへリアルタイムに届け、監督職員が離れた場所から確認・指示を行えるようにする仕組みのことです。国土交通省の「建設現場における遠隔臨場に関する実施要領(案)」では、ウェアラブルカメラなどの動画撮影用カメラで取得した映像と音声を使い、Web会議システムなどを介して「段階確認」「材料確認」「立会」を行うことを遠隔臨場と定義しています。
仕組み自体は、普段の業務で使うWeb会議とよく似ています。違いは、映す対象が会議室の人ではなく現場の構造物や材料であること、そして映像を見た監督職員が「契約図書と合っているか」を判断できるだけの見え方が求められることです。そのため、カメラの性能、通信の安定性、発注者側の受信環境のどれか一つが欠けても、確認は成り立ちません。国の制度の経緯や費用の扱いについては、国土交通省の遠隔臨場を解説した記事で詳しく紹介しています。
臨場・現場臨場・遠隔臨場の違いは、監督職員が「どこで」「どのような手段で」確認を行うかにあります。公共工事の書類や要領で使われる言葉を、順に整理します。
臨場とは、監督職員などがその場に立ち会い、施工の状況や材料、出来形などが契約図書に適合しているかを確かめることです。土木工事共通仕様書では、「立会」を、契約図書に示された項目について監督職員などが臨場により契約図書との適合を確かめることと定義しています。段階確認・材料確認・立会のいずれも、もともとは監督職員の臨場を前提とした確認行為です。
現場臨場とは、監督職員が実際に工事現場へ出向いて確認する、従来からの方法のことです。国の実施要領でも、遠隔臨場と対比して「従来の現場臨場」という言葉が使われています。一方、土木工事共通仕様書の段階確認の規定には、「監督職員は、設計図書に定められた段階確認において臨場を机上とすることができる」という一文があり、この場合、受注者は施工管理記録や写真などの資料を提示して確認を受けます。国の実施要領は、遠隔臨場による段階確認がこの規定に該当すると説明しており、遠隔臨場は「机上での臨場」を映像と音声で行う方法と位置づけられています。
遠隔臨場とは、カメラの映像と音声を使い、監督職員が現場に行かずにリアルタイムで確認する方法です。検索などでは「Web臨場」「リモート臨場」「ネット臨場」と呼ばれることもありますが、国土交通省や多くの都道府県・市町村の要領で使われている正式な名称は「遠隔臨場」です。写真による事後確認と違い、監督職員がその場で「もう少し寄ってください」「スケールを当ててください」と指示できる点が、遠隔臨場の大きな特徴です。
遠隔臨場を構成する要素は、撮影機器、通信回線、配信の仕組み(Web会議システムなど)、そして確認する側の受信環境の4つです。国の実施要領では、施工計画書に、使用する動画撮影用カメラの機器と仕様、配信に使うWeb会議システムなどを記載することが求められています。
撮影機器とは、現場の映像と音声を取得するカメラのことで、ウェアラブルカメラ、スマートグラス、スマートフォンやタブレット、定点に設置するネットワークカメラなどが使われます。国の実施要領では、動画撮影用カメラの参考値として、画素数640×480以上(カラー)、フレームレート15fps以上、マイク・スピーカーはモノラル以上が示されています。2024年3月に策定された工事検査向けの要領では、ウェアラブルカメラに加えて360度カメラも例示されています。計測しながら見せる、高所で確認するといった場面では、両手が空くウェアラブルカメラが向いています。
通信回線とは、撮影した映像を現場から送り出すための回線で、LTEなどのモバイル回線、スマートフォンのテザリング、現場事務所や仮設のWi-Fiなどがあります。国の実施要領では、Web会議システムに関する参考値として、通信回線速度は下り最大50Mbps・上り最大5Mbps以上、映像・音声の転送レートは平均1Mbps以上とされています。画質ごとの最低限必要な通信速度の目安は、480pで800kbps、720pで1.8Mbps、1080pで3.0Mbpsです。現場で特に重要になるのは、映像を送り出す「上り」の速度と、その安定性です。
配信の仕組みとは、カメラの映像を監督職員の端末へ届けるためのWeb会議システムや遠隔作業支援システムのことです。国の実施要領では「Web会議システム等」とされており、特定の製品は指定されていません。受注者は、監督職員と協議したうえで、確認行為を実施できるものを選定します。現場側の操作が少ないこと、通信が不安定でも映像が止まりにくいこと、確認する側から画質やズームを調整できることなどが、選ぶ際の判断材料になります。
確認する側の受信環境とは、監督職員が映像を受け取って見るためのパソコンや通信環境のことです。見落とされがちですが、受注者の側でどれだけ高画質な映像を送っても、発注者の端末で映らなければ遠隔臨場は実施できません。この点は、次の章で詳しく説明します。
発注者側の通信環境で注意したいのは、官公庁のパソコンでは使えるソフトや通信の方式が制限されていることが多い点です。国の実施要領には、「発注者の標準的な通信環境の仕様」として、次のような条件が示されています。
つまり、発注者側の端末では、専用アプリをインストールせずに、ブラウザだけで映像を受け取れる仕組みであることが前提になります。一般的なWeb会議システムの中には、UDP通信を前提にしているものや、アプリのインストールが必要なものもあるため、普段社内で使っているシステムがそのまま使えるとは限りません。記載されているOSのバージョンなどは要領策定時点のものなので、実施前には、発注者が実際に使っている端末と通信環境で接続テストを行い、映像と音声が問題なく届くかを確認しておきましょう。自治体の工事では、発注者ごとに使えるシステムが指定されている場合もあります。
映像で確認してもらうための撮り方のポイントは、監督職員が現場にいるときと同じ情報を、画面越しに順序立てて伝えることです。国の実施要領で示されている実施方法に、現場での工夫を加えて、当日の撮り方を整理します。
撮影しながら移動する場合は、進行方向の段差や障害物を確認するなど、安全への配慮も欠かせません。また、撮影される作業員には事前に目的や用途を説明して承諾を得ること、現場の外ができる限り映り込まないようにすることも、実施要領で留意事項として示されています。
映像だけで確認しきれないときは、まず機器の調整などによる改善を試み、それでも難しい場合は従来の現場臨場に切り替えます。国の実施要領では、段階確認・材料確認・立会のいずれについても、監督職員が確認するのに十分な情報を得られた場合に、現場臨場に代えて遠隔臨場を利用できるとしています。監督職員が十分な情報を得られないと判断した場合は、その旨が受注者に伝えられ、改善が困難であれば現場臨場で確認が行われます。
また、電波状況などで遠隔臨場が中断した場合の対応方法は、事前に受発注者間で協議しておくこととされています。例えば、確認箇所を画像や映像で記録し、メールなどで共有するといった代替手段です。「途中で映像が止まったら、その日の確認ができなくなる」という事態を避けるためにも、施工計画の段階で決めておきましょう。
記録の扱いについては、国の実施要領では、受注者は映像と音声を配信するのみで、記録と保存を行う必要はないとされています。確認を行うのが現場技術員の場合は、現場技術員がパソコンの画面キャプチャなどで実施状況を記録し、情報共有システム(ASP)などで監督職員に提出します。自治体の要領では記録の扱いが異なる場合があるため、発注者ごとの要領を確認してください。
遠隔臨場のために整えた機器や通信の仕組みは、発注者による確認以外の場面にも活かせます。主な活用場面は次のとおりです。
一度仕組みを整えておけば、こうした場面でも同じ機器と手順を使い回せるため、導入にかかる手間に対する効果を高められます。
国産の遠隔作業支援システム「LiveOn Wearable」は、対応するスマートグラスの電源を入れるだけで接続が完了し、現場の作業者が操作しなくても、事務所のPCと映像・音声でやり取りできます。PCからは解像度・フレーム数・ズーム・ライトなどを遠隔で変更できるため、監督職員が細部を確認したいときにも、現場の手を止めずに見え方を調整できます。独自技術によってデータ通信量を抑えており、電波環境が安定しにくい屋外の現場でも映像や音声が途切れにくい設計です。NETIS(新技術情報提供システム)にも登録されています(登録番号KT-240116)。LTEモジュールを搭載した約76gの超小型ウェアラブルカメラ「LiveOn Nano」を使えば、スマートフォンのテザリングに頼らずに、カメラ単体で映像を送ることもできます。
発注者側の受信環境で利用できるかどうかは、工事ごとに監督職員と協議し、事前の接続テストで確認しておくことをおすすめします。現場向けのカメラのタイプや選び方は、工事現場のウェアラブルカメラを解説した記事でも紹介しています。
基本的には同じものを指しています。Web会議システムなどを使って監督職員が離れた場所から確認する方法を、「Web臨場」「リモート臨場」と呼ぶことがありますが、国土交通省や多くの自治体の要領での名称は「遠隔臨場」です。書類や施工計画書には、発注者の要領で使われている名称で記載しましょう。
使えることもありますが、発注者側の端末で利用できるかの確認が必要です。国の実施要領では、発注者の標準的な通信環境として、TCPの80番・443番ポートでの通信、Microsoft Edgeでの利用、アプリは原則インストールできないことなどが示されています。使用するシステムは監督職員と協議して選定し、事前に接続テストを行ってください。
国の実施要領では、参考値として通信回線速度が下り最大50Mbps・上り最大5Mbps以上、映像・音声の転送レートが平均1Mbps以上とされています。画質ごとの目安は、720pで1.8Mbps、1080pで3.0Mbpsです。いずれも目安であり、利用する人数や電波状況、時間帯によって変わる点に注意が必要です。
国の実施要領では、電波状況などで中断した場合の対応方法を、事前に受発注者間で協議しておくこととされています。確認箇所を画像や映像で記録してメールなどで共有する方法が例として挙げられています。機器の調整などで改善できない場合は、現場臨場に切り替えて確認を行います。
基本的な仕組みは同じですが、対象となる工事の範囲、受注者の希望で実施するか発注者が指定するか、記録の扱い、使用できるシステムなどは自治体ごとに異なります。多くの都道府県や市町村が独自の実施要領や試行要領を公開しているため、発注者のホームページで最新版を確認しましょう。
遠隔臨場は、土木工事共通仕様書で認められている「机上での臨場」を、カメラの映像と音声で行う仕組みです。撮影機器・通信回線・配信の仕組み・発注者側の受信環境の4つがそろってはじめて成り立ち、特に発注者の端末ではアプリをインストールできないことが多いなど、受信側の条件にも注意が必要です。映像で十分な確認ができない場合は現場臨場に切り替えることになるため、撮り方の段取りと、中断したときの代替手段を事前に決めておくことが大切です。
現場の作業者に操作を求めず、確認する側から画質やズームを調整できるLiveOn Wearableのような遠隔作業支援システムを活用すれば、監督職員が必要とする映像を安定して届ける仕組みを整えられます。発注者の環境や現場の条件に合わせた構成について、導入のご相談はお問い合わせ・資料請求ページから承っています。
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