週明けに郊外の太陽光発電所を点検に行くと、パワーコンディショナにつながるケーブルが根元から切断され、持ち去られていた。発電は止まり、売電収入も途絶える。防犯カメラは設置していたものの、録画していたレコーダーごと壊されていて、犯行の様子は何も残っていなかった――銅の価格高騰を背景に、こうした金属ケーブルの盗難が全国で相次いできました。 2025年6月に金属盗対策法が公布され、2026年6月からは金属くずの買受業者に本人確認などが義務づけられました。2025年の金属盗の認知件数は前年から減少に転じたものの、依然として年間1万5,000件を超えています。この記事では、警察庁などの資料をもとに金属盗の現状と新しい法律のポイントを整理し、発電所や資材置き場などの管理者が取り組みたい防犯対策と、防犯カメラの映像を確実に残すための運用を解説します。
金属盗とは、銅線や銅板、溝蓋(グレーチング)、マンホールのふたなど、金属類を狙った窃盗のことです。盗まれた金属は金属くずとして買受業者に持ち込まれ、換金されるケースが多いとされています。警察庁が統計をとり始めた2020年以降、件数が急増し、治安上の大きな課題となってきました。
背景にあるのは、金属スクラップ価格の高騰です。参議院の調査資料によると、銅スクラップの1kgあたりの平均価格は、2020年まで600円前後で推移していましたが、2021年から上昇し、2023年には約1,131円になりました。カーボンニュートラルに向けて、再生可能エネルギーや電気自動車に欠かせない銅の需要が世界的に高まっていることが、価格を押し上げています。
金属盗の被害の現状は、2024年まで急増が続いた後、2025年に減少へ転じたものの、依然として高い水準にあります。警察庁や国会の資料から、主なデータを整理します。
警察庁の「令和7年の犯罪情勢」では、2025年の減少について、太陽光発電施設からの金属ケーブル窃盗の被害が減少したことが大きく影響したと考えられるとしたうえで、金属盗対策法の確実な運用などにより、抑止と検挙をより一層推進する必要があるとしています。件数が減ったとはいえ、統計開始時の約3倍の水準であることに変わりはありません。
また、同じ資料では、空き家を狙った窃盗で、エアコンの室外機や金属類が被害品に含まれるものが大きく増えていることも示されています。銅などの金属価格の高騰により、金属くずとして売却するために盗まれていると考えられています。狙われるのは太陽光発電所だけではなく、建設現場の資材置き場や、人の目が届きにくい施設全般に広がっているといえます。
太陽光発電所でケーブルが盗まれると、ケーブルそのものの損害に加え、復旧までの間は発電が止まり、売電収入が失われます。参議院の調査資料では、太陽光発電協会などの資料をもとに、発電停止による売電損失は、特別高圧設備の場合で平均4,220万円、最大で1億円以上とされています。設備の規模が小さい発電所でも、復旧工事の手配や保険の手続きを含め、経営への影響は小さくありません。
金属盗対策法とは、2025年6月20日に公布された「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律」の略称です。盗品の換金を難しくすること、犯行用具を規制すること、盗難防止情報を周知して防犯対策を進めることの三本柱で構成されています。
2025年9月1日からは、一定の大きさや機構を持つケーブルカッターやボルトクリッパー(指定金属切断工具)を、業務その他正当な理由なく隠して携帯することが禁止されました。例えば、長さ45cm以上またはラチェット機構や電動・油圧の装置を備えたケーブルカッター、長さ75cm以上または電動・油圧の装置を備えたボルトクリッパーが対象です。参議院の調査資料によると、金属ケーブル窃盗で使われた犯行用具の84%がケーブルカッターやボルトクリッパーでした。
2026年6月1日からは、銅くずなどの特定金属くずを買い受ける事業者に、営業所ごとの公安委員会への届出、買受け時の相手方の本人確認、取引記録の作成・保存、盗品の疑いがある場合の警察官への申告などが義務づけられました。各地の警察の案内では、施行時点ですでに営業していた事業者は、2026年8月31日までに届け出る必要があるとされています。また、古物営業法施行規則の改正により、2025年10月1日からは、電線、グレーチング、エアコンの室外機などについて、取引金額にかかわらず本人確認などの対象とされています。
これらの規制は、盗んだ金属を売りにくくすることで犯行の動機を断つためのものです。一方で、施設の管理者側の防犯対策が不要になるわけではありません。各地の警察も、引き続き施設管理者に対策を呼びかけています。
施設管理者が取り組みたい金属盗の防犯対策は、侵入させない、盗みにくくする、見られていると思わせる、異常に早く気づく、の4つの観点で組み合わせることです。静岡県警察などが太陽光発電施設の管理者向けに示している対策をもとに整理します。
建設現場や工事業者に対しては、使っていない銅線ケーブルなどを屋外に置いたままにせず、鍵のかかる場所に保管することも呼びかけられています。一つの対策だけで完全に防ぐことは難しいため、施設の立地や規模に合わせて複数を組み合わせることが大切です。
防犯カメラが役に立たなかったとなりがちな理由は、カメラを設置しても、映像を残す仕組みと、映像を確認する運用が伴っていないことです。人の少ない郊外の施設では、次のような事態が起こりがちです。
現地に録画用のレコーダーを置く方式では、犯人にレコーダーを壊されたり、持ち去られたりすると、肝心の映像が失われてしまいます。カメラの電源ケーブルや通信線が切断された場合も、その時点で録画が止まります。犯行の直前までの映像を現地の外に残しておけるかどうかが、証拠を確保できるかの分かれ目になります。
無人の施設では、被害に気づくのが数日後や、次の定期点検のときになることも珍しくありません。レコーダーの容量が小さく、古い映像から上書きされる設定になっていると、被害に気づいたときには該当する時間帯の映像が残っていないこともあります。
複数の発電所や資材置き場を管理している場合、映像を確認するために現地へ足を運ばなければならないと、日常的に確認するのは困難です。カメラの故障や画角のずれに気づかず、いざというときに映っていなかったという事態も起こり得ます。
映像を確実に残すためのポイントは、録画データを現地の外に保存すること、離れた場所から定期的に確認できるようにすること、そして事件が起きたときにすぐに映像を取り出せるようにしておくことです。
防犯カメラの映像を証拠として提出する際の保存や改ざん防止の考え方は、防犯カメラ映像は証拠になるのかを解説した記事でも紹介しています。
クラウド録画システム「LiveOn RecX」は、レコーダーを使わずに、ネットワークカメラの映像をクラウド上のストレージに保存するシステムです。ONVIF規格に準拠したネットワークカメラに対応しているため、すでに設置しているカメラを活かせる場合もあります。録画した映像は、専用アプリを使わずに、パソコン・スマートフォン・タブレットのブラウザから確認でき、複数のカメラや複数の現場の映像を一覧で表示できます。録画映像の一部を切り取って保存したり、ダウンロードしたりすることもできるため、被害が起きたときに必要な場面を取り出して共有する作業もしやすくなります。ビューアー用のアカウント数に制限はなく、発電所のオーナーや保守会社など、複数の関係者で映像を確認する体制も作れます。
クラウド録画を利用するには、現地にインターネットに接続できる通信環境が必要です。また、侵入をその場で検知して通報するには、センサーや機械警備との組み合わせが有効です。施設の立地や通信環境に合わせた構成を、導入前に検討しておきましょう。クラウド録画システムを比較する際の観点は、クラウド録画システムの選び方を解説した記事も参考にしてください。
金属盗対策法で新たに届出や本人確認などが義務づけられたのは、主に特定金属くずを買い受ける事業者です。発電所や資材置き場の管理者に、防犯設備の設置が義務づけられたわけではありません。ただし、法律の三本柱の一つに盗難防止情報の周知が掲げられており、各地の警察が施設管理者に防犯対策を呼びかけています。
警察庁の統計では、2025年の金属盗の認知件数は前年比24.1%減の1万5,712件でしたが、統計をとり始めた2020年の5,478件と比べると、約3倍の水準です。警察庁も、引き続き抑止と検挙を推進する必要があるとしています。空き家の室外機など、被害が増えている品目もあるため、警戒を緩めずに対策を続けることが大切です。
防犯カメラには、犯行をためらわせる効果と、被害が起きたときに状況を記録する効果がありますが、カメラだけで盗難を完全に防ぐことは難しいのが実情です。フェンスやケーブルの埋設といった物理的な対策、センサーライトや機械警備、定期的な見回りと組み合わせることが推奨されています。
法律で一律に決められた期間はありませんが、無人の施設では被害に気づくまでに時間がかかることがあるため、定期点検の間隔よりも長く保存しておくことをおすすめします。保存期間を長くするほど必要な容量や費用も増えるため、点検の頻度や施設の重要度に応じて設定しましょう。
まず110番通報し、現場の状況をできるだけそのままにして警察の到着を待ちます。防犯カメラの映像は、上書きされないうちに該当する時間帯のデータを保存しておきましょう。あわせて、保険会社や保守会社への連絡、発電が止まっている場合は復旧の手配を進めます。
金属盗は2025年に減少へ転じたものの、依然として年間1万5,000件を超える水準にあります。金属盗対策法では、2025年9月から犯行用具の隠匿携帯が禁止され、2026年6月からは金属くずの買受業者に届出や本人確認が義務づけられましたが、施設を守るための防犯対策は、引き続き管理者自身が進める必要があります。フェンスやケーブルの対策と組み合わせながら、防犯カメラの映像を現地の外に確実に残し、離れた場所から確認できる運用を整えておくことが重要です。
レコーダーを置かずに映像をクラウドへ保存できるLiveOn RecXのようなクラウド録画システムを活用すれば、複数の発電所や資材置き場の映像をまとめて管理し、万一のときにも映像を確実に残せる体制づくりにつながります。施設の環境に合わせた構成について、導入のご相談はお問い合わせ・資料請求ページから承っています。
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