国土交通省の遠隔臨場とは?実施要領のポイントとデメリット・対策を解説【2026年版】

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投稿日:2026/10/30
更新日:2026/10/30
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段階確認の立会のために、監督職員が片道1時間以上かけて現場へ向かい、受注者はその到着を待って作業を止める。公共工事の現場では、こうした「確認のための移動と待ち時間」が、発注者と受注者の双方にとって長年の負担になってきました。 国土交通省は2020年度から遠隔臨場を試行し、2022年度からは直轄土木工事で原則として全ての工事に適用しています。2024年3月には、完成検査などの工事検査にも遠隔臨場を使うための要領も策定されました。この記事では、国土交通省の実施要領で定められている対象・機器の参考値・費用・実施の流れを整理し、現場で指摘されているデメリットとその対策を解説します。

国土交通省の遠隔臨場とは

国土交通省の遠隔臨場とは、ウェアラブルカメラなどの動画撮影用カメラで取得した映像と音声を使い、発注者の監督職員が遠隔地からWeb会議システムなどを介して「段階確認」「材料確認」「立会」を行う取り組みです。国土交通省大臣官房技術調査課が定める「建設現場における遠隔臨場に関する実施要領(案)」で、対象や実施方法が示されています。

従来、直轄土木工事では、これらの確認行為は監督職員が現場に出向いて行うのが基本でした。遠隔臨場では、受注者が現場で撮影した映像をリアルタイムに配信し、監督職員は事務所などからその映像を見て、契約図書との適合を確かめます。発注者は移動時間を、受注者は監督職員の到着を待つ時間や日程調整の手間を減らせることが、制度の大きな目的です。

遠隔臨場は、内閣府の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)の一環として、建設業者とIoT関連企業・大学などが開発・検討してきた技術でもあります。現在は、2024年4月に国土交通省が策定した「i-Construction 2.0」が掲げる、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、すなわち生産性を1.5倍に高めるという目標に向けた取り組みの一つとしても位置づけられます。

遠隔臨場はいつから始まったのか

遠隔臨場は、2020年度(令和2年度)に直轄土木工事で試行が始まり、2022年度(令和4年度)から本格的に実施されています。国土交通省の発表をもとに、これまでの主な経緯を整理します。

  • 2020年度:生産性向上や非接触・リモート化に向けて試行を開始し、全国で760件を実施
  • 2021年度:試行件数が約1,800件に拡大し、移動時間や受注者の待ち時間の短縮といった効果を確認
  • 2022年3月:「建設現場における遠隔臨場に関する実施要領(案)」と「建設現場の遠隔臨場に関する監督・検査実施要領(案)」を策定し、取組事例集を発刊
  • 2022年度:直轄土木工事で本格実施へ移行。官庁営繕工事でも、2022年7月以降に入札手続きを始める工事で原則として遠隔臨場を実施
  • 2023年3月:実施要領を一部改定し、取組事例集の第二版を策定
  • 2024年3月:「遠隔臨場による工事検査に関する実施要領(案)」を策定し、完成検査や中間技術検査などにも適用範囲を拡大

2022年の本格実施にあたって、国土交通省は、2022年4月1日以降に発注する工事などで、遠隔臨場の対象工種がある工事は原則として全ての工事に適用するとしました。新規に発注する工事では、遠隔臨場の実施が特記仕様書に記載されます。ただし、通信環境が整わない現場や、工種によって不十分・非効率になることが明確な場合は、この限りではないとされています。

実施要領で押さえておきたい5つのポイント

国土交通省の実施要領で押さえておきたいポイントは、対象となる確認行為、機器を準備する側、機器の参考値、記録の扱い、費用の計上方法の5つです。ここでは、令和5年3月版の実施要領をもとに整理します。

対象は段階確認・材料確認・立会

遠隔臨場の対象は、土木工事共通仕様書に定められた「段階確認」「材料確認」「立会」です。段階確認は設計図書に示された施工段階で出来形や品質などを確認すること、材料確認は工事に使う材料の品質や規格を確認すること、立会は契約図書に示された項目について監督職員が臨場して確認することを指します。実施要領では、これらに加えて、設計図書と現場の不一致や事故などの報告時に遠隔臨場を活用することも妨げないとされています。

機器は受注者が準備・運用する

遠隔臨場に使うカメラなどの機器は、原則として受注者が準備・運用します。使用するカメラとWeb会議システムなどは、監督職員と協議したうえで、確認行為を実施できるものを選定することとされています。発注者側で用意しているカメラや、すでに使っているWeb会議システムがある場合、また特記仕様書に別途記載がある場合は、この限りではありません。

カメラと通信の参考値

実施要領では、動画撮影用カメラの参考値として、画素数640×480以上(カラー)、フレームレート15fps以上、マイクとスピーカーはそれぞれモノラル(1チャンネル)以上が示されています。Web会議システムについては、通信回線速度が下り最大50Mbps・上り最大5Mbps以上、映像・音声の転送レートが平均1Mbps以上とされています。画質ごとの最低限必要な通信速度の目安としては、720pで1.8Mbps、1080pで3.0Mbpsといった数値も示されています。ただし、いずれも現場での適用を拘束するものではなく、受発注者間で協議して判断するものとされています。また、機器の設定次第で仕様を満たさなくなる場合があるため、端末の画質設定にも注意が必要です。

受注者に記録・保存の義務はない

国の実施要領では、受注者は遠隔臨場の映像と音声を配信するのみで、記録と保存を行う必要はないとされています。確認を行うのが現場技術員の場合は、現場技術員が使うパソコンなどで画面キャプチャを行って記録し、情報共有システム(ASP)などで監督職員に提出します。ただし、自治体の工事では独自の要領で記録の扱いを定めている場合があるため、発注者の要領を確認しておきましょう。

費用は技術管理費に積上げ計上

遠隔臨場にかかる費用は、受発注者間の協議を踏まえ、技術管理費に積上げ計上するとされています。機器の手配は基本的にリースとしてその賃料を計上し、やむを得ず購入する機器は、購入費に耐用年数に対する使用期間(日単位)の割合を掛けた分を計上します。従来の立会・確認に要する費用は共通仮設費として率計上されているため、遠隔臨場で追加で必要になる費用を、受注者の見積もりをもとに計上する考え方です。

遠隔臨場の実施の流れ

遠隔臨場の実施の流れは、受発注者間の協議と施工計画書への記載から始まり、事前準備、当日の実施、記録の提出へと進みます。実施要領で示されている主な手順は次のとおりです。

  • 受発注者間で、遠隔臨場を適用する確認項目や使用する機器について協議する
  • 施工計画書に、適用する確認項目、使用するカメラとWeb会議システムなどの機器と仕様、実施方法を記載し、監督職員の確認を受ける
  • 事前に、実施時間・実施箇所・必要な資料などを監督職員と確認し、立会が必要な場合は立会依頼書を提出する
  • 当日は、機器と通信状況を確認したうえで、現場周辺の状況を伝え、監督職員が位置関係を把握する
  • 黒板などに工事名・工種・確認内容・設計値・測定値・使用材料などを表示し、冒頭で読み上げて確認を得る
  • 終了時に確認箇所の内容を読み上げ、監督職員による実施結果の確認を得る

なお、監督職員による確認・立会の実施時間は、やむを得ない理由がある場合を除き、監督職員の勤務時間内とされています。対面での確認と同じく、事前の段取りが当日の確認をスムーズにする鍵になります。

工事検査への拡大と受注者側の制度との違い

遠隔臨場の適用範囲は、施工中の確認行為から、完成時などの工事検査へと広がっています。あわせて、受注者側の技術者配置の制度でも、映像を使った現場確認が活用されるようになりました。

遠隔臨場による工事検査(2024年3月策定)

遠隔臨場による工事検査とは、ウェアラブルカメラや360度カメラなどの映像と音声を使い、Web会議システムなどを介して、完成検査・中間技術検査・既済部分検査・完済部分検査を遠隔で行うことです。国土交通省は2023年度の試行を経て、2024年3月に「遠隔臨場による工事検査に関する実施要領(案)」を直轄土木工事を対象に策定しました。電子化した書類を画面共有で確認する「遠隔書類検査」と、映像で現場を確認する「遠隔実地検査」があり、現場の通信環境や構造物が適さないと検査職員が判断した場合は、従来どおり現場で実地検査を行います。

改正建設業法の専任特例との違い

遠隔臨場が発注者による確認の仕組みであるのに対し、2024年12月に施行された改正建設業法の専任特例は、受注者側の主任技術者・監理技術者の配置に関する仕組みです。請負金額が1億円未満(建築一式工事は2億円未満)であることなどの要件を満たせば、本来は専任が必要な技術者が2つの現場を兼任できます。要件の一つとして、現場以外の場所から現場の状況を確認するために必要な、映像と音声の送受信が可能な情報通信機器の設置が求められています。遠隔臨場のために整えた機器や通信環境は、こうした受注者側の現場管理にも活かせるといえます。

遠隔臨場のデメリットと対策

遠隔臨場のデメリットは、通信環境に左右されること、映像では細部や現場全体が分かりにくい場合があること、撮影者の安全とプライバシーに配慮が必要なこと、そして機器の準備や運用に手間とコストがかかることです。国土交通省の事例集や実施要領の留意事項をもとに、主なデメリットと対策を整理します。

通信環境に左右される

山間部やトンネル、地下などの電波が弱い現場では、映像が止まったり音声が途切れたりして、確認に時間がかかることがあります。試行に参加した受発注者からも、電波状況が悪い日は実施できない、画像より音声の方が通信しづらかったといった声が寄せられています。対策としては、事前に通信テストを行う、通信量が少なくても映像を維持できる機器を選ぶ、中継機器や現場Wi-Fiを用意するといった方法があります。実施要領では、電波状況などで中断した場合に、確認箇所を画像や映像で記録してメールなどで共有するといった対応方法を、事前に受発注者間で協議しておくよう求めています。

細部や現場全体が分かりにくい

ウェアラブルカメラの映像は作業者の目線に限られるため、現場全体の状況が把握しにくいという指摘があります。また、画像が粗く、細かい数字や文字が確認しにくかったという声もあります。対策としては、ズームや画質を遠隔で調整できる機器を選ぶ、スケールや黒板を映す位置をあらかじめ決めておく、定点カメラや360度カメラを併用して全体像を補うといった工夫が考えられます。逆光で見づらくなることもあるため、撮影する向きにも注意が必要です。

撮影者の安全とプライバシーへの配慮が必要

撮影に意識が集中すると足元への注意が薄れ、カメラの保持や操作で両手がふさがると、転倒などの事故につながるおそれがあります。実施要領では、撮影しながら移動する場合は進行方向の段差や障害物を確認するよう求めています。また、撮影される作業員に撮影の目的や用途を説明して承諾を得ること、現場の外ができる限り映り込まないようにすること、意図せず映り込んだ人物などは特定できないよう措置することも留意事項として示されています。ハンズフリーで使えるウェアラブルカメラを選ぶことは、安全面の対策にもなります。

機器の準備と運用に手間がかかる

遠隔臨場の機器は受注者が準備するため、機種の選定、施工計画書への記載、現場担当者への操作説明といった準備が必要になります。現場の担当者がIT機器に不慣れな場合、操作に手間取ることで、かえって確認に時間がかかることもあります。電源を入れるだけでつながるなど、現場側に操作を求めない機器を選ぶこと、最初は確認回数の多い工種から始めて手順を定着させることが、運用の負担を抑えるポイントです。夏場の気温上昇などで機器が故障するおそれがある場合は、受発注者間で実施の可否を協議することとされています。

遠隔臨場を支えるLiveOnの遠隔作業支援システム

国産の遠隔作業支援システム「LiveOn Wearable」は、対応するスマートグラスの電源を入れるだけで接続が完了し、現場の作業者が操作しなくても、事務所のPCと映像・音声でやり取りできます。PCからは解像度・フレーム数・ズームなどを遠隔で変更できるため、黒板の数字や細部を確認したいときに、監督職員側の求めに応じて見え方を調整できます。独自技術によってデータ通信量を抑えており、電波環境が安定しにくい屋外の現場でも映像や音声が途切れにくい設計です。NETIS(新技術情報提供システム)にも登録されています(登録番号KT-240116)。LTEモジュールを搭載した約76gの超小型ウェアラブルカメラ「LiveOn Nano」は、ヘルメットや胸ポケットに装着でき、IP66の防じん・防水性能を備えています。

遠隔臨場で使う機器は、監督職員と協議のうえで確認行為を実施できるものを選定することが前提です。工事現場向けのウェアラブルカメラのタイプや選び方については、工事現場のウェアラブルカメラを解説した記事もあわせて参考にしてください。

よくある質問

遠隔臨場は義務なの?

国土交通省の直轄土木工事では、2022年度から、遠隔臨場の対象工種がある工事は原則として全ての工事に適用されています。ただし、通信環境が整わない現場や、工種によって不十分・非効率になることが明確な場合は例外とされています。都道府県や市町村の工事では、それぞれの自治体が定める要領に従うため、発注者ごとに確認が必要です。

遠隔臨場にかかる費用は誰が負担するの?

国の実施要領では、遠隔臨場にかかる費用は、受発注者間の協議を踏まえて技術管理費に積上げ計上するとされています。機器は基本的にリースとし、その賃料を計上します。費用の計上は受注者からの見積もりをもとに行い、実施に必要な最低限の費用を計上することとされています。

スマホでも遠隔臨場はできるの?

実施要領では、使用する機器は監督職員と協議したうえで、確認行為を実施できるものを選定することとされており、スマートフォンやタブレットが使われている例もあります。ただし、撮影中は手がふさがるため、計測しながら見せる作業や高所での確認では、ハンズフリーで使えるウェアラブルカメラの方が安全に実施しやすくなります。

遠隔臨場の映像は録画しないといけないの?

国の実施要領では、受注者は映像と音声を配信するのみで、記録と保存を行う必要はないとされています。確認を行う現場技術員が、画面キャプチャなどで実施状況を記録して提出します。自治体の工事では記録の扱いが異なる場合があるため、発注者の要領を確認してください。

完成検査も遠隔でできるの?

国土交通省は2024年3月に「遠隔臨場による工事検査に関する実施要領(案)」を策定し、直轄土木工事の完成検査・中間技術検査・既済部分検査・完済部分検査で遠隔臨場を適用できるようにしました。ただし、現場の通信環境や構造物が遠隔での実地検査に適さないと検査職員が判断した場合は、従来どおり現場で検査が行われます。

まとめ

国土交通省の遠隔臨場は、2020年度の試行を経て2022年度から直轄土木工事で原則適用され、2024年3月には工事検査にも対象が広がりました。実施要領では、段階確認・材料確認・立会を対象に、受注者が機器を準備し、参考値を目安として受発注者間で協議しながら運用すること、費用は技術管理費に積上げ計上することなどが定められています。一方で、通信環境や映像の見え方、撮影者の安全といった課題もあるため、機器選びと事前の段取りが成否を分けます。

現場の作業者に操作を求めず、屋外でも映像が途切れにくいLiveOn Wearableのような遠隔作業支援システムを活用すれば、監督職員の確認に必要な映像を安定して届けながら、受発注者双方の移動と待ち時間を減らす体制を整えられます。現場の環境や工種に合わせた機器構成について、導入のご相談はお問い合わせ・資料請求ページから承っています。

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