空港グランドハンドリングの人手不足、新人育成と地方空港の支援をどう進めるか

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投稿日:2026/10/07
更新日:2026/10/07
業種別活用シーン・導入事例

到着した航空機を決められた時間内に送り出すため、限られた人数で誘導から手荷物の搭降載までを回さなければならない。経験を積んだスタッフが育つ前に、また次の新人を迎えることになる――空港の地上業務の現場では、こうした状況が続いています。 訪日客の増加で航空需要が伸びる一方、空港の地上業務を担う人材の確保と育成は、国も課題として取り組むテーマになっています。この記事では、空港のグランドハンドリングで人材育成が難しい理由を整理したうえで、映像を活用した教育と、離れた拠点から現場を支える遠隔支援の考え方を紹介します。

グランドハンドリングとは?航空機の運航を地上で支える業務

グランドハンドリングとは、航空機が空港に到着してから出発するまでの限られた時間内に行われる、地上での支援業務の総称です。航空機の誘導や駐機場での移動(トーイング)、手荷物や貨物の搭降載、客室の清掃、燃料の給油、旅客の搭乗案内など、その内容は多岐にわたります。

これらの作業は、航空機の定時運航と安全に直結しています。ひとつの作業が遅れれば出発全体が遅れ、作業の誤りは機体の損傷や重大な事故にもつながりかねません。限られた時間の中で、複数の作業チームが連携しながら正確に作業をこなす必要があるため、現場では高い技能と経験が求められます。

空港の地上業務で人手不足が課題になっている理由

空港の地上業務で人手不足が課題になっている理由は、新型コロナウイルス感染症の影響で一度大きく減った人員の回復途中で、航空需要が急速に戻り、さらに将来の担い手不足も見込まれているためです。

国土交通省の令和7年版国土交通白書によると、グランドハンドリング業務に従事する職員は、感染症の影響などにより一時、感染拡大前の8割程度まで減少し、その後回復が進んでいるものの、人口減少や高齢化の影響による将来的な担い手不足が課題とされています。国土交通省は、グランドハンドリングと保安検査を対象とした有識者会議を設置し、人材確保やDX化などについて関係者が一丸となって取り組むため、2023年6月には「空港業務の持続的発展に向けたビジョン」の中間とりまとめを公表しています。

一方で、政府は2030年に訪日外国人旅行者数6,000万人という目標を掲げており、国際線を中心に航空需要のさらなる増加が見込まれています。便数が増えても、地上業務を担う人が確保できなければ、増便や新規路線の受け入れが難しくなります。地上業務の人材の確保と育成は、空港や航空会社だけでなく、地域の観光や経済にも関わる課題になっています。

グランドハンドリングで新人育成が難しい4つの理由

グランドハンドリングで新人育成が難しい理由は、安全に関わる作業が多く資格や訓練が必要なうえ、実際の作業は時間に追われる現場でしか経験できないという、空港ならではの事情があるためです。

安全に関わる作業が多く、ひとり立ちまでに時間がかかる

航空機の誘導やトーイング、特殊車両の運転などは、社内の訓練や資格の取得を経てはじめて担当できる作業です。新人が現場で戦力になるまでには一定の期間が必要で、その間はベテランが付き添って指導しなければなりません。

実地で練習できる機会が限られる

駐機場での作業は、実際の運航の合間に行われるため、練習のために時間を確保することが簡単ではありません。限られた折り返し時間の中では、ベテランが新人にゆっくり説明する余裕もなく、「見て覚える」指導に頼りがちです。

屋外の騒音の中で、指示や説明が伝わりにくい

駐機場はエンジン音や車両の音が大きく、口頭での説明が伝わりにくい環境です。作業中に細かな注意点を伝えることは難しく、作業の後に振り返ろうとしても、どの場面の話なのかを正確に共有するのは簡単ではありません。

地方空港では指導できる人が限られる

便数の少ない地方空港では、配置されているスタッフの人数そのものが少なく、経験豊富な指導役が常にいるとは限りません。普段とは異なる機材への対応やトラブルが発生したときに、相談できる相手がその場にいないこともあります。

こうした課題に対して、業界でも育成期間を短くする取り組みが進んでいます。国土交通白書によると、2024年4月からはANAとJALが、ランプハンドリングの作業資格を相互に承認する仕組みの運用を開始しました。これにより訓練期間が削減され、両社の作業に従事できる資格者を早期に養成できるようになったとされています。

映像を活用した空港地上業務の教育と遠隔支援

映像を活用した空港地上業務の教育とは、ベテランの作業を作業者の目線で記録して教材にしたり、現場の映像を離れた場所の指導者と共有して助言を受けたりすることで、限られた時間と人員の中でも効率よく技能を伝える方法です。

ベテランの作業を「作業者の目線」で教材にする

ベテランが手荷物の搭降載や機体周りの点検を行う際に、胸元などに小型のカメラを装着して作業を記録すれば、作業者が実際にどこを見て、どの順番で確認しているかが分かる映像が残ります。新人は運航のない時間帯にこの映像を繰り返し見て、作業の流れや確認のポイントを事前に頭に入れてから現場に出ることができます。騒音の中では聞き取りにくかった説明も、映像を見ながら落ち着いて受けられます。

新人の作業を記録し、具体的に振り返る

新人の作業を記録しておけば、作業の後に指導者と一緒に映像を見返し、「この場面で周囲の確認が足りなかった」「この手順の順番が違う」と、具体的な場面を示しながらフィードバックできます。口頭での振り返りに比べて認識のずれが生まれにくく、良かった点も映像で確認できるため、新人の自信にもつながります。

地方空港の現場を拠点空港から支援する

地方空港のスタッフが現場の映像を共有すれば、拠点空港や本社にいる経験豊富な担当者が、その映像を見ながら助言できます。普段あまり扱わない機材への対応や、車両・機材の不具合が発生したときなどに、離れた場所から専門知識を持つ人が状況を確認できることは、少人数で運営する空港の大きな支えになります。

共通の作業手順を映像で標準化する

資格の相互承認のように、会社や空港の垣根を越えて人材を育てる動きが広がると、「誰が教えても同じ水準で伝わる」教材の重要性が高まります。標準となる作業手順を映像として整備しておけば、指導者による教え方のばらつきを抑え、どの空港に配属された新人にも同じ内容を伝えられます。手順が改訂されたときも、該当する場面の映像を差し替えるだけで済むため、紙のマニュアルを全面的に作り直すよりも更新の負担を減らせます。現場の熟練者が持つ「暗黙のコツ」を映像で見える形にしておくことは、ベテランの退職によるノウハウの流出を防ぐことにもつながります。

ウェアラブルカメラを使った遠隔支援の具体像

ウェアラブルカメラを使った遠隔支援とは、現場の作業者が身につけたカメラの映像と音声を、離れた場所の指導者や専門スタッフと共有し、両手を空けたまま助言を受けながら作業を進める仕組みです。遠隔作業支援システムの「LiveOn Wearable」は、現場から送られてくる映像や音声を確認しながら作業者とリアルタイムにコミュニケーションでき、切り取った画像に書き込みをして指示を送るスナップショット機能や、資料を共有する機能を備えています。騒音で言葉が伝わりにくい場面でも、画像に印を付けて「どこを」確認すべきかを示せる点は、駐機場のような環境と相性のよい機能です。

また、「LiveOn Nano」は重さ約80gの超小型ウェアラブルカメラで、LTE通信によってリアルタイムで現地の映像を遠隔地と共有しながら通話ができます。クラウド録画と同時にカメラ本体にも映像を自動保存するため、教材にしたい作業や、後から振り返りたい作業の記録を残しやすい設計です。

空港の地上業務では、次のような場面での活用が考えられます。

  • ランプ作業の教育:ベテランの搭降載作業や機体周りの確認を作業者目線で記録し、新人研修の教材として活用する
  • 車両・機材の点検:トーイングトラクターやベルトローダーなどの特殊車両の不具合を、整備担当者と映像で共有して対応を判断する
  • 地方空港の支援:便数の少ない空港で普段と異なる対応が必要になったとき、拠点空港の担当者が映像を見て助言する
  • 貨物の取り扱い:貨物の破損や梱包の異常を見つけたときに、その場の状況を映像で記録し、関係部署と共有する
  • 旅客案内の振り返り:カウンターや搭乗口での案内の様子を記録し、接遇研修の題材として活用する

空港でウェアラブルカメラを導入するときの注意点

空港でウェアラブルカメラを導入するときの注意点は、空港特有の安全とセキュリティのルールに適合させることです。一般的な現場以上に厳格な規則があるため、次のような点を関係者と事前に確認しておく必要があります。

  • 制限区域内での撮影ルールを確認する:空港の制限区域内での撮影や機器の持ち込みは、空港管理者や航空会社の規則に従う必要があるため、撮影してよい範囲と目的を事前に確認する
  • 落下物を防ぐ固定方法にする:駐機場では小さな落下物が機体の損傷につながるおそれがあるため、カメラや付属品を確実に固定し、紛失時の報告ルールも決めておく
  • 作業の安全を最優先にする:作業中に機器の操作や通話に気を取られないよう、通話する場面や操作する担当者をあらかじめ決めておく
  • 映り込む情報の扱いを決める:旅客の顔や手荷物のタグ、保安に関わる設備などが映り込む可能性があるため、保存期間や閲覧できる人を限定する
  • 通信環境を確認する:駐機場や貨物上屋の中など、場所によって電波の状況が異なるため、主な作業場所で事前にテストを行う

最初は、運航に直接関わらない研修用の記録や、車両・機材の点検など、比較的ルールを整えやすい場面から試すのが現実的です。効果と運用上の課題を確かめながら、活用の範囲を広げていくとよいでしょう。

よくある質問

グランドハンドリングってどんな仕事なんですか

グランドハンドリングは、航空機が到着してから出発するまでの間に、地上で行うさまざまな支援業務のことです。航空機の誘導や移動、手荷物や貨物の積み降ろし、客室の清掃、給油、旅客の案内などが含まれ、航空機の定時運航と安全を地上から支えています。

空港の制限区域でカメラを使っても大丈夫ですか

空港の制限区域内では、撮影や機器の持ち込みについて空港管理者や航空会社の規則が定められています。業務で使う場合は、撮影の目的と範囲、映像の取り扱いについて関係者の確認を取ったうえで、ルールに沿って運用する必要があります。

映像があれば新人教育の期間は短くなりますか

資格の取得や実地での訓練が必要な作業は、映像だけで置き換えることはできません。ただし、作業の流れや確認のポイントを事前に映像で学んでおくことで、限られた実地訓練の時間をより効果的に使えるようになります。振り返りにも映像を使えば、同じ指摘を繰り返す手間も減らせます。

駐機場はうるさいのに、通話でやり取りできますか

騒音の大きい場所では、音声だけで細かな指示を伝えるのは難しい場合があります。映像を共有し、画像に印を付けて場所を示すといった方法を組み合わせれば、言葉だけに頼らずに意図を伝えやすくなります。通話は、騒音の少ない場所に移動してから行うといった運用上の工夫も有効です。

地方空港の小さな会社でも使えますか

スタッフの少ない地方空港こそ、離れた場所の経験者とつながる仕組みが役立ちます。まずは研修用の記録や車両の点検など、限られた用途から試し、どの場面で効果が大きいかを確かめながら活用の範囲を広げていくのがおすすめです。

まとめ

航空需要の回復と訪日客の増加が続くなか、空港のグランドハンドリングを担う人材の確保と育成は、国も取り組む重要な課題になっています。安全に関わる作業が多く、実地での練習機会も限られる空港の地上業務では、ベテランの作業を作業者の目線で教材にし、新人の作業を映像で振り返り、離れた拠点から現場を支える仕組みが、限られた人員で技能を伝える手段になります。LiveOn Wearableのような遠隔作業支援システムを活用すれば、騒音の大きい駐機場でも画像に印を付けて指示を伝えたり、地方空港の現場を拠点空港から支援したりできます。まずは研修用の記録や車両の点検など、始めやすい場面から試してみてはいかがでしょうか。空港の現場に合った活用方法や導入のご相談は、お問い合わせ・資料請求ページから承っています。

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