収穫のタイミングを判断できるのは、経験の長いベテランひとりだけ。新しく雇ったスタッフに作業を任せたいが、圃場が何か所にも分かれていて、つきっきりで教えることができない――規模を拡大している農業法人や大規模経営の現場では、こうした悩みが年々大きくなっています。 農業の担い手が減り続けるなかで、家族経営から「人を雇って育てる」経営へと移る動きが広がっています。この記事では、農業の現場で人材育成が難しい理由を整理したうえで、離れた圃場で働くスタッフを映像と通話で支える「遠隔での営農指導」の考え方と、導入時のポイントを紹介します。
農業の人材育成が経営課題になっている理由は、農業経営体の数が大きく減る一方で、法人化や規模拡大によって「従業員を雇い、育てる」ことが必要な経営が増えているためです。
農林水産省が2026年3月に公表した2025年農林業センサスの確定値によると、2025年2月1日時点の農業経営体は83万6千経営体で、5年前と比べて24万経営体、率にして22.3%減少しました。一方で、法人経営体は3万4千経営体と、5年前より10.1%増えています。農業を続ける経営体の数が減るなかで、残った経営体が離農した農家の農地を引き受け、法人として規模を広げていく流れが鮮明になっています。
規模が大きくなれば、家族だけでは作業が回らなくなり、農業経験のない人を雇用して戦力に育てる必要が出てきます。ところが、農業の技術は作物や土地、天候によって判断が変わる部分が多く、マニュアルだけでは伝えきれません。人を雇ったものの育て方が確立できず、ベテランの負担ばかりが増えてしまうという声も少なくありません。
国も、2024年に改正された食料・農業・農村基本法で、農業者の減少を前提に生産性の向上を図る方向性を打ち出し、同年10月には「スマート農業技術活用促進法」を施行しました。限られた人数で農業を続けていくために、デジタル技術をどう使うかは、今後の農業経営に欠かせない視点になりつつあります。
農業の現場で新人を育てにくい理由は、技術の多くが経験に基づく判断であることに加え、作業場所が広く分散し、教える人が常にそばにいられないという、農業ならではの事情があるためです。
収穫に適した実の色づき、病気や害虫の初期症状、水管理のタイミングなど、農業の判断の多くは、実物を見て経験を積むことで身につくものです。ベテランは一目で分かることでも、言葉で説明しようとすると「なんとなく」「いつもの感じ」になってしまい、新人には伝わりにくいのが実情です。
規模を拡大した農業法人では、引き受けた農地が地域内のあちこちに点在していることが珍しくありません。ベテランが一つの圃場で作業している間、別の圃場にいる新人は、迷ったときにすぐ相談できる相手がいない状態になります。電話で聞こうにも、口頭だけでは状況が正確に伝わらず、結局ベテランが車で駆けつけることになりがちです。
収穫時期を誤る、病気の兆候を見逃す、農薬の希釈や散布の手順を間違えるといったミスは、収量や品質の低下に直結し、その年の収入に大きく響きます。新人に任せたくても、失敗したときの損失を考えると、なかなか任せきれないというジレンマがあります。
農業は作業が特定の時期に集中します。人手が最も必要な繁忙期こそ、ベテランも自分の作業で手一杯になり、新人に教える余裕がなくなります。新人が育つ前に繁忙期が終わり、翌年また一から教え直すという悪循環に陥ることもあります。
遠隔での営農指導とは、圃場で作業するスタッフが身につけたカメラやスマートフォンの映像を、事務所や別の圃場にいる指導者とリアルタイムで共有し、映像を見ながら通話で助言や指示を行う方法です。指導者が現地へ移動しなくても、新人が見ているものを同じ目線で確認できるため、「どこの」「何を」「どうするか」を具体的に伝えられます。
遠隔指導の考え方は、建設現場の立会いや製造業の設備保守などではすでに広く取り入れられています。農業でも、果樹の栽培指導や新規就農者の育成などを対象に、スマートグラスなどを使って熟練者が離れた場所から指導する実証が各地で行われてきました。
新人が「この実は収穫してよいか」「この葉の変色は病気か」と迷ったときに、カメラをその場所に向けてもらえば、指導者は映像を見て判断を伝えられます。判断の理由もその場で説明できるため、繰り返すうちに新人自身の判断基準が育っていきます。
ベテランが剪定や収穫、機械の点検などの作業をするときにカメラを身につけておけば、作業者の目線の映像がそのまま教材になります。繁忙期に教える時間が取れなくても、閑散期に映像を見返しながら作業のポイントを学ぶことができ、翌年以降の教育にも繰り返し使えます。
見回りの途中で病害虫の発生や設備の不具合、獣害の痕跡などを見つけたとき、映像で共有すれば、口頭や文字だけで伝えるよりも正確に状況が伝わります。その場で対応を決められるため、被害が広がる前に手を打ちやすくなります。
ウェアラブルカメラを使った遠隔指導とは、作業者が胸元や頭部にカメラを装着し、両手を空けたまま映像と音声を指導者と共有して作業を進める方法です。「LiveOn Nano」は重さ約80gの超小型ウェアラブルカメラで、LTE通信に対応しているため、Wi-Fiのない圃場でもリアルタイムで現地の映像を遠隔地と共有しながら通話ができます。クラウド録画と同時にカメラ本体にも映像を自動保存するダブル録画機能を備えているので、教材として残したい作業の記録にも向いています。
また、遠隔作業支援システムの「LiveOn Wearable」では、現場から送られてくる映像を確認しながら、切り取った画像に書き込みをして指示を送るスナップショット機能を使えます。「この枝のここで切る」「この葉の、この斑点を確認して」といった細かな指示を、画像に印を付けて伝えられるため、言葉だけでは伝わりにくい農作業の指導と相性のよい機能です。
作物や作業ごとに、次のような活用が考えられます。
このほか、外国人材を受け入れている農業法人では、言葉だけに頼らず映像で手本を見せられる点も役立ちます。新人が「誰かとすぐにつながれる」状態にあることは、作業の正確さだけでなく、ひとりで広い圃場に出る不安を和らげることにもつながります。
遠隔指導を活かした新人育成とは、指導者がそばにいる段階から、ひとりで判断できる段階までを、映像でのつながりを使って段階的に移していく育て方です。いきなり新人をひとりで圃場に出すのではなく、次の3つの段階を踏むと、無理なく任せられる範囲を広げていけます。
最初の段階では、新人はベテランと一緒に作業しながら、録画したベテランの作業映像を見返して、なぜその判断をしたのかを学びます。「この色になったら収穫」「この位置で切る」といった判断の基準を、映像を一時停止しながら確認していくと、口頭で説明を受けるよりも具体的に理解できます。
基本的な作業を覚えたら、新人はひとりで圃場に出て作業し、判断に迷ったときだけカメラで指導者とつないで確認します。指導者は映像を見て判断を伝えるだけでなく、「なぜそう判断したか」を新人にも答えてもらうようにすると、判断の基準が早く身につきます。指導者は移動せずに複数の圃場の新人を支えられるため、繁忙期でも育成を止めずに済みます。
新人がひとりで判断できるようになってきたら、作業の録画を週に一度など定期的に振り返り、判断が適切だったかを確認します。問題がなければ、任せる作業や圃場の範囲を少しずつ広げていきます。振り返りに使った映像は、次に入ってくる新人の教材としても活用できるため、育成のノウハウが組織に蓄積されていきます。
農業で遠隔指導を導入するときのポイントは、屋外の厳しい環境でも無理なく使い続けられるかと、指導する側の体制を先に決めておくことの2点です。次のような点を事前に確認しておくと、導入後に使われなくなる失敗を防ぎやすくなります。
最初から全員・全圃場で使おうとせず、まずは新人が多い圃場や、判断を誤ったときの損失が大きい作業に絞って試すのがおすすめです。実際に指導の手間や移動時間がどれだけ減ったかを確かめながら、使う範囲を広げていくと、現場の理解も得やすくなります。
LTE通信に対応したカメラであれば、携帯電話の電波が届く場所では映像を送ることができます。ただし、山間部などでは電波が弱く、映像が途切れやすい場合もあるため、導入前に主な圃場で通信テストを行うことをおすすめします。電波が届きにくい場所でも、カメラ本体に録画しておけば、後から映像を確認することができます。
短い相談であればスマートフォンのビデオ通話でも対応できますが、作業中はスマートフォンを持つために片手がふさがってしまいます。ウェアラブルカメラなら両手を空けたまま作業を続けられ、作業者の目線の映像をそのまま共有できる点が大きな違いです。作業の記録を自動で残せることも、教材づくりに役立ちます。
家族だけで経営している場合でも、後継者に技術を引き継ぎたい、離れた圃場の見回りを効率化したいといった目的があれば、活用の余地はあります。まずは、技術の継承や見回りのために、どれだけの時間を使っているかを振り返ってみると、導入の効果を見積もりやすくなります。
指導する側は、基本的にパソコンやタブレットで映像を見ながら話すだけなので、普段のビデオ通話と大きく変わりません。最初は若手スタッフが操作を担当し、ベテランは映像を見て助言することに集中するといった役割分担にすると、無理なく使い始められます。
新人向けの作業手順の教材として使えるほか、病害虫が発生したときの状況記録や、作業内容の振り返り、取引先への栽培状況の説明などにも活用できます。どの映像を残すかをあらかじめ決めておくと、必要な映像を後から探しやすくなります。
農業経営体の減少と法人化が進むなかで、農業経験のないスタッフを雇い、短い期間で戦力に育てることは、多くの農業法人にとって避けて通れない課題になっています。圃場が分散し、ベテランが常にそばにいられない農業の現場では、映像と通話で離れた場所から指導できる仕組みが、新人の判断を支え、ベテランの移動や指導の負担を減らす手段になります。LiveOn Nanoのような軽量なウェアラブルカメラを活用すれば、Wi-Fiのない圃場でも新人の目線の映像を共有して助言でき、ベテランの技術を教材として残していくこともできます。まずは新人が多い圃場や、判断を誤ると損失の大きい作業から試してみてはいかがでしょうか。農業の現場での活用方法や導入のご相談は、お問い合わせ・資料請求ページから承っています。
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