遠方への転勤が決まったものの、内見のためだけに何度も現地へ足を運ぶのは難しい。契約に必要な重要事項説明のためだけに、平日の日中に店舗へ来店してもらわなければならない――不動産の契約プロセスには、こうした顧客・事業者双方の負担が根強く残っています。 こうした負担を軽減する手段として広がっているのが、オンラインでの内見と、映像を使った重要事項説明(IT重説)です。この記事では、不動産業界でオンライン化が進む背景を整理したうえで、IT重説の仕組みと要件、導入時に押さえておきたいポイントを紹介します。
不動産業界でオンライン化が進む背景には、遠方の顧客対応や人手不足といった課題があります。転勤や進学にともなう引っ越しでは、契約者本人が現地を訪れる時間を取りにくいケースが多く、内見や重要事項説明のためだけに何度も足を運んでもらうことが、顧客にとって大きな負担になっています。
一方、不動産会社の側にも、案内できるスタッフの人数が限られる、複数店舗の来店対応を少ない人員でまわさなければならないといった事情があります。オンラインでの内見や重要事項説明は、顧客の移動負担を減らすだけでなく、事業者側の対応工数を圧縮する手段としても注目されています。
特に、単身赴任や転勤による引っ越しでは、契約者本人が現地に来られないまま、家族が代理で内見に立ち会うといったケースも珍しくありません。オンラインで内見できれば、契約者本人がどこにいても物件の様子をリアルタイムで確認しながら質問でき、代理での確認による情報の伝達漏れも防ぎやすくなります。
IT重説とは、不動産の賃貸・売買契約において宅地建物取引業法で義務付けられている重要事項説明を、パソコンやタブレットなどの映像通信を使って実施する方法のことです。従来は対面で行うことが原則でしたが、一定の要件を満たせば、対面と同様に扱われることが国土交通省によって示されています。
IT重説として認められるためには、主に次の要件を満たす必要があります。
IT重説は2017年から賃貸取引で導入され、2021年からは売買取引でも認められるようになりました。事前の登録や許可は不要で、要件を満たせばどの宅地建物取引業者・宅地建物取引士でも実施できます。
そもそも重要事項説明は、契約者が物件のリスクや契約条件を正しく理解したうえで契約するために設けられている、消費者保護の観点からも重要な手続きです。IT重説はあくまで「説明を行う場」を映像に置き換えるものであり、説明の内容や、宅地建物取引士が果たすべき責任そのものが軽減されるわけではありません。対面と同等の丁寧さで説明を行うという前提は変わらない、という点を押さえておく必要があります。この前提を担当者全員が共有していることが、トラブルのないIT重説の運用につながります。
オンライン内見とIT重説を組み合わせることで、物件探しから契約までの一連のプロセスを、顧客が一度も来店せずに進められる場合があります。遠方に住んでいる顧客や、平日の日中に時間を取りにくい顧客にとっては、契約の選択肢が広がることになります。
事業者側にとっても、遠方の顧客対応のために担当者が出張する必要がなくなる、店舗に来店できる時間帯が限られる顧客の対応がしやすくなるといったメリットがあります。特に、地方の物件を都市部の顧客に案内するケースなど、物理的な距離がネックになっていた商談を成立させやすくなる点は、事業機会の拡大にもつながります。
また、内見の日程調整にかかる時間を短縮できる点も見逃せません。対面での内見は、案内スタッフと顧客双方の空き時間を合わせる必要がありますが、オンラインであれば移動時間を考慮せずに済むため、日程の候補を出しやすくなります。複数の物件を続けて比較検討したい顧客にとっても、移動を挟まずに続けて内見できる点は利便性の向上につながります。
IT重説を実施する際は、要件として定められている「双方向でやり取りできるIT環境」を確保することが欠かせません。単に映像を一方的に流すだけでなく、顧客からの質問にその場で答えられる双方向のコミュニケーションが必要です。
一方的に説明を録画配信するような方法や、音声だけのやり取りでは、この要件を満たしているとは言えません。宅地建物取引士と顧客が、映像と音声の両方でリアルタイムにやり取りできる環境を、事前に確実に用意しておく必要があります。
また、宅地建物取引士証を画面上で視認できたことを確認する手順も、要件として定められています。「LiveOn Meet」のような画面共有・映像通信に対応したWeb会議システムを使えば、取引士証を画面に映して確認する、重要事項説明書を画面共有しながら該当箇所を示す、といった対応がしやすくなります。
重要事項説明書などの書類は、説明前にあらかじめ送付しておく必要があります。郵送だけでなく、電子書面での送付も認められているため、契約者にとっても事前に内容を確認する時間を確保しやすくなります。ただし、電子書面での送付には契約者の承諾を得るなど、別途確認しておくべき手続きもあるため、自社の運用フローに落とし込む際は、最新のルールを確認しておくことが大切です。
顧客側の通信環境やITリテラシーにも配慮が必要です。高齢の顧客や、映像通話に不慣れな顧客に対しては、事前に接続方法を案内する、簡単な操作確認を済ませておくといった準備をしておくと、当日のトラブルを減らせます。
オンライン内見についても、案内する物件の映像品質や、部屋の隅々まで見せられるカメラワークが顧客の納得感を左右します。担当者がスマートフォンを手に持って歩きながら案内する方法もありますが、映像の揺れや音声の聞き取りづらさが気になる場合は、事前に室内を撮影した映像を組み合わせて紹介するなど、当日のライブ映像と組み合わせる工夫も検討する価値があります。
オンライン内見・IT重説は便利な選択肢である一方、すべての取引をオンラインに置き換える必要はありません。物件の状態を細部まで確認したい顧客や、契約金額が大きく慎重な判断が求められる取引では、対面での内見・説明を希望する顧客も一定数存在します。
現実的な進め方としては、まず遠方の顧客や日程調整が難しい顧客に対してオンラインの選択肢を用意し、顧客自身に対面かオンラインかを選んでもらう形が挙げられます。強制的にオンラインへ一本化するのではなく、顧客の希望に応じて柔軟に選べる体制を整えておくことが、双方にとって納得感のある進め方につながります。
また、初回の内見はオンラインで概要を確認し、契約を具体的に検討する段階になったら、実際に現地を訪れて最終確認を行うというように、オンラインと対面を組み合わせた進め方をとる事業者も増えています。オンラインが対面を完全に代替するというよりも、顧客の状況に応じて選べる選択肢を増やす、という位置づけで捉えると導入しやすくなります。
オンライン内見・IT重説を導入する際は、機材やシステムを用意するだけでなく、担当者が要件を正しく理解し、実践できるようにしておくことも重要です。宅地建物取引士証の視認確認や、書類の事前送付といった手順を、担当者ごとの判断に任せてしまうと、対応にばらつきが生じ、要件を満たせていない実施になってしまうリスクがあります。
新しく担当することになったスタッフにも同じ品質で対応してもらえるよう、社内研修やマニュアル整備を行っておくことが望ましいでしょう。特に、IT重説を初めて実施する店舗では、社内でロールプレイを行い、実際の流れを一通り体験しておくと、当日の対応もスムーズになります。
複数店舗を展開している事業者であれば、本部が統一したマニュアルを整備し、各店舗の担当者に共有しておくことで、店舗ごとの対応品質のばらつきを抑えられます。運用開始後も、実施件数や顧客からの反応を本部で把握できるようにしておくと、必要に応じて手順を見直す際の判断材料にもなります。
オンライン内見・IT重説を導入する際は、次のようなポイントをあらかじめ確認しておくと、運用開始後のトラブルを防ぎやすくなります。
特に、担当者によって説明の進め方や確認手順にばらつきがあると、要件を満たせていないIT重説になってしまうリスクがあります。社内でチェックリストやマニュアルを整備し、誰が対応しても同じ手順で進められるようにしておくことが重要です。
これらの項目は、一度整えて終わりにするのではなく、実際に運用を始めてから顧客の反応や現場の声を踏まえて見直していくことも大切です。特に、通信トラブルが起きやすい時間帯や、顧客からよく聞かれる質問などは、運用を重ねることで見えてくる部分も多く、定期的にチェックリストを更新していく姿勢が求められます。
IT重説の実施にあたって、事前の登録や許可は不要とされています。ただし、要件を満たしていない場合は対面での重要事項説明と同様には扱われないため、実施前に要件を正しく理解しておくことが重要です。自己流の解釈で進めるのではなく、最新のガイドラインを確認しながら運用することをおすすめします。
要件を満たしたIT重説を実施すれば、重要事項説明の場面については対面と同様に扱われます。ただし、契約書への署名・押印の方法や、契約全体の進め方については、取引の内容によって対応が異なる場合があるため、自社の契約フローに合わせて確認しておく必要があります。契約書自体の電子化を検討する際は、別途最新のルールを確認しておきましょう。
事前に接続方法を案内する資料を送付する、説明当日より前に簡単な接続テストを行う、といった準備をしておくと、当日の混乱を減らせます。操作が不安な顧客には、電話でのサポートも並行して用意しておくと安心です。
セットで実施する必要はありません。内見は対面で行い、その後の重要事項説明だけをオンラインで実施する、あるいは内見のみオンラインで行い契約手続きは来店して対面で進める、といったように、それぞれを独立した選択肢として組み合わせることも可能です。顧客の状況や取引の内容に応じて、柔軟に組み合わせを検討するとよいでしょう。どちらか一方だけを導入することから始めても、十分に負担軽減の効果を得られます。
不動産のオンライン内見・IT重説は、遠方の顧客対応や人手不足といった課題に対応しながら、顧客にとっても事業者にとっても負担を減らせる手段です。導入にあたっては、双方向の映像通信環境の確保、宅地建物取引士証の視認確認、書類の事前送付といった要件を満たすことが欠かせません。「LiveOn Meet」のような画面共有・映像通信に対応したシステムを活用すれば、こうした要件を満たしながら、オンラインでの内見・重要事項説明を進めやすくなります。導入のご相談は、お問い合わせ・資料請求ページから承っています。
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