社内の不正を知った従業員が、勇気を出して内部通報窓口に連絡してきた。ところが、面談のために会議室へ呼び出したところを同僚に見られ、「誰が通報したのか」という噂が広がってしまった――通報者の秘密を守ることは、内部通報制度が機能するための大前提です。 2026年12月1日に施行される改正公益通報者保護法では、通報者を特定しようとする行為(通報者探索)の禁止が法律に明記され、フリーランスも保護の対象に加わります。この記事では、改正のポイントを整理したうえで、通報者との面談や調査のためのヒアリングをオンラインで行う場合に、秘密をどう守るかという実務上のポイントを紹介します。
改正公益通報者保護法とは、企業などの内部の不正を通報した人をより確実に守るため、2025年6月に成立した公益通報者保護法の改正法です。2026年12月1日に施行されます。公益通報者保護法は、通報を理由とする解雇などの不利益な取扱いから通報者を守るとともに、事業者に対して通報に適切に対応するための体制を整えることを求めている法律です。
消費者庁が公表している改正法の概要では、改正の柱として次の4つが示されています。
2022年6月に施行された前回の改正では、通報対応を担当する「従事者」の指定や、内部通報に対応する体制の整備が事業者に義務づけられました。今回の改正は、その体制が実際に機能しているかどうかを、罰則や行政の権限によって後押しする内容になっています。
今回の改正で変わる主な点は、通報を妨げる行為の禁止、保護対象の拡大、そして罰則の強化です。消費者庁の概要資料をもとに、事業者の実務に関わる主な変更点を整理します。
通報者探索の禁止とは、事業者が、正当な理由なく、通報者が誰であるかを特定しようとする行為をしてはならないというルールです。あわせて、正当な理由なく、従業員などに通報しないことを約束させるといった方法で通報を妨げる行為も禁止され、そうした合意は無効とされます。
これまでも、指針などで通報者を特定しようとする行為を防ぐことは求められていましたが、改正によって法律そのものに禁止規定が置かれることになります。「匿名の通報が来たので、まず誰が送ったのかを確かめよう」という対応は、正当な理由がない限り許されないという点を、管理職を含めて改めて周知しておく必要があります。
改正法では、事業者と業務委託関係にあるフリーランスと、業務委託関係が終了してから1年以内のフリーランスが公益通報者の範囲に加わります。通報を理由に業務委託契約を解除するなどの不利益な取扱いも禁止されます。社外の協力者や業務委託先の個人から通報が寄せられることも想定し、窓口の案内や受付の手順を見直しておくことが求められます。
通報を理由として解雇や懲戒をした者には、6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金という刑事罰が新たに設けられ、法人に対する罰金の上限は3,000万円とされます。また、通報から1年以内に行われた解雇や懲戒は、通報を理由としたものと推定されることになり、裁判では事業者の側が通報とは無関係であることを示す必要が生じます。
常時使用する労働者が300人を超える事業者には、従事者を指定する義務があります。改正後は、この義務に違反した事業者が勧告に従わない場合の命令権と、命令に違反した場合の刑事罰(30万円以下の罰金)が新設され、消費者庁による立入検査の権限も設けられます。さらに、体制整備義務の例示として、事業者の通報対応の体制を従業員などに周知する義務が明示されます。なお、常時使用する労働者が300人以下の事業者については、従事者の指定と体制整備はいずれも努力義務とされています。
通報者を守るための情報管理とは、通報者が誰であるかが分かる情報を、通報対応に本当に必要な最小限の人だけが扱うようにすることです。消費者庁のハンドブックでは、通報者を特定させる情報を必要最小限の範囲を超えて共有すること(範囲外共有)を防ぐ措置として、次のような例が挙げられています。
通報に関する情報を電子データで管理している場合は、情報を閲覧できる人を必要最小限に限定することや、操作・閲覧の履歴を記録することといった情報セキュリティ上の対策も例示されています。また、通報対応を担当する従事者には、通報者が誰であるかが分かる情報を漏らしてはならない守秘義務があり、違反した場合には30万円以下の罰金が科されることがあります。
注目したいのは、面談の場所についての例示です。「勤務時間外に個室や事業所外で面談する」とされているのは、社内の会議室に呼び出すこと自体が、周囲に通報の事実を気づかせるきっかけになり得るためです。面談の「場」をどう設けるかは、通報者の秘密を守るうえで見落とせない論点です。
通報者との面談をオンラインで行う意義は、社内で人目につく形で呼び出すことなく、通報者が安心して話せる場所と時間で詳しい事情を聴けることです。在宅勤務の日や勤務時間外に、自宅などから参加してもらえば、会議室の予約や移動の様子から通報の事実が周囲に伝わるリスクを減らせます。
支店や工場、営業所など、窓口の担当者と離れた拠点で働く従業員からの通報でも、オンラインであれば移動の負担をかけずに面談できます。業務委託で働くフリーランスのように、普段は事業所に出入りしない人が通報者になる場合にも、オンライン面談は現実的な選択肢になります。
法律事務所などの外部窓口に通報の受付を委託している場合も、外部窓口の担当者と通報者がオンラインで面談すれば、通報者が社外の事務所まで足を運ぶ必要がなくなります。ハンドブックでは、外部窓口を設ける場合の取り組みとして、通報者の明示的な同意がない限り、通報者を特定させる情報を事業者にも開示しないといった措置も考えられるとされています。
一方で、オンライン面談には特有のリスクもあります。招待メールが関係のない人に転送される、会議の録画データが共有フォルダに置かれたままになる、通報者が会社支給のパソコンを使ったことで社内のシステムに参加の記録が残るといった形で、通報者の存在が意図せず伝わってしまうおそれがあります。オンラインで面談を行う場合は、こうした点まで含めて運用ルールを決めておく必要があります。
オンライン面談で秘密を守るための基本は、招待・参加・記録の3つの段階で、通報者を特定させる情報に触れる人と経路を最小限にすることです。具体的には、次のような点をあらかじめ決めておくとよいでしょう。
このうち、記録の扱いについては、ハンドブックでも、通報事案に関する記録・資料に記載されている関係者の固有名詞を仮称で表記したりマスキングしたりすることが考えられるとされています。また、メールでのやり取りについても、システムの設定によって上司などに同報されていないか確認することや、詳細はメール本文ではなくパスワード付きの添付ファイルでやり取りすることなどへの注意が示されています。
通報者本人からの情報の流出にも注意が必要です。ハンドブックでは、自分が通報者であることに関する情報管理の重要性を、通報者本人にも十分に理解してもらうことが望ましいとされています。面談の冒頭で、面談を行ったこと自体を周囲に話さないよう丁寧に伝えておくと、通報者自身を守ることにつながります。
調査のためのヒアリングでは、関係者に「通報があったから調べている」と気づかれないように進めることが、通報者を守るうえで重要です。ハンドブックでは、調査の端緒が通報であることを関係者に認識させない工夫として、定期的な監査や職場環境調査、人事面談といった機会とあわせて調査を行うことや、核心部分ではなく周辺部分から調査を始めることなどが例示されています。
関係者へのヒアリングをオンラインで行う場合も、特定の人だけを急に呼び出すのではなく、部署全体を対象にした定例の面談の中で話を聴くなど、通常の業務の流れに溶け込ませる工夫が考えられます。拠点が離れている場合でも、オンラインであれば複数の部署で同じ形式の面談を実施しやすくなります。
通報者との面談に使うWeb会議ツールは、社外の人でも簡単に参加できることと、通信や記録の管理を自社でコントロールできることの両方を満たすものを選ぶのが基本です。通報者が社内のアカウントを使わずに参加できれば、社内システムに参加の記録が残ることを避けやすくなります。
国産Web会議システムの「LiveOn Meet」は、LiveOnを契約していない相手にも、招待用のURLを記載したメールを送って会議に参加してもらうことができます。パソコンからはアプリをインストールせずにブラウザで参加することもでき、通信データはAESで暗号化されます。クラウド版に加えて、閉域網などの自社環境にサーバーを構築できるオンプレミス版も用意されているため、通報対応のように機密性の高いやり取りを、自社の管理下にある環境で行いたい場合にも選択肢になります。
LiveOn Meetでは、自分の画面だけ、会議全体、デスクトップ全体のいずれかを選んで録画できます。面談の記録を残す場合は、どの範囲を録画するか、録画データをどこに保存し誰が閲覧できるようにするかを、通報対応の規程とあわせて決めておくとよいでしょう。
どのツールを選ぶ場合でも、会議への入室をどのように管理できるか、録画データの保存先やアクセス権限をどのように設定できるかといった点は、導入前に提供事業者へ確認しておくことをおすすめします。Web会議全般のセキュリティ対策については、Web会議のセキュリティ対策を解説した記事もあわせて参考にしてください。
改正法の施行に向けて、内部通報の受付や面談の運用を見直す際は、次のような点を確認しておくと安心です。
内部通報制度は、窓口を設けるだけでは機能しません。「通報しても自分が特定されることはない」と従業員が信頼できてはじめて、不正の早期発見につながります。施行を機に、受付から面談、調査、記録の保管までの流れを通して、通報者の秘密が守られる仕組みになっているかを点検しておきましょう。具体的な規程の整備にあたっては、弁護士などの専門家に相談することも検討してください。
2026年12月1日に施行されます。改正法は2025年6月に成立・公布され、施行日はその後、政令で定められました。通報者探索の禁止やフリーランスの保護、罰則の新設などは、この施行日から適用されます。
常時使用する労働者が300人以下の事業者の場合、従事者の指定や内部通報に対応する体制の整備は努力義務とされています。ただし、通報を理由とする解雇・懲戒の禁止や、それに対する刑事罰は、事業者の規模にかかわらず関係する内容です。規模にかかわらず、通報者を守る体制を整えておくことが望ましいといえます。
法律や消費者庁の資料で、面談の方法がオンラインか対面かに限定されているわけではありません。ハンドブックでは、範囲外共有を防ぐ措置として、勤務時間外に個室や事業所外で面談することが例示されています。オンライン面談は、通報者が人目を気にせず話せる方法の一つになり得ますが、招待の経路や録画データの扱いなど、オンラインならではの情報管理に注意が必要です。
通報者を特定しようとする行為は、正当な理由がない限り禁止されています。ハンドブックでは、正当な理由が認められるのは限定的な場合にとどまるべきとしたうえで、例えば、通報者がどのような場面で不正を知ったのかを特定しなければ必要な調査や是正ができない場合に、守秘義務を負う従事者が通報者の特定につながる事項を尋ねることは該当し得るとしています。
2026年12月1日に施行される改正公益通報者保護法では、通報者探索や通報妨害の禁止が法律に明記され、フリーランスの保護や、不利益な取扱いに対する刑事罰も新設されます。通報者が安心して声を上げられるかどうかは、受付から面談、調査、記録の保管までのあらゆる場面で、通報者を特定させる情報が守られているかにかかっています。
通報者との面談をオンラインで行えば、社内での呼び出しによって通報の事実が伝わるリスクを減らし、離れた拠点の従業員や社外のフリーランスとも面談しやすくなります。オンプレミス環境にも対応するLiveOn Meetのような国産Web会議システムを活用すれば、機密性の高い面談を自社の管理下で行う体制も整えられます。運用に合わせた構成について、導入のご相談はお問い合わせ・資料請求ページから承っています。
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