近年の建設DXの推進を踏まえて、建設業界では労働生産性の向上が求められています。こうした背景から、遠隔臨場や建設DXに対応する手段の一つとして、ウェアラブルカメラを導入する現場が増えています。
導入を検討するなかで「具体的にどのようなメリットがあるのか」とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、ウェアラブルカメラの概要を説明したうえで、工事現場に導入するメリットや活用事例を紹介します。
ウェアラブルカメラとは、身体に装着して映像や音声を記録・共有できる小型カメラのことです。工事現場では、作業員がヘルメットや作業服に、メガネ型やスマートグラス型で装着し、現場の状況を遠隔地の担当者へリアルタイムに共有する用途で使われます。
カメラにマイクやスピーカーが搭載されている製品であれば、現場映像を見ながら遠隔地の担当者と会話できます。そのため、遠隔臨場や作業指示、トラブル対応、そして安全確認などに活用しやすい点が特徴です。
工事現場でウェアラブルカメラの活用が進んでいる背景には、主に以下の3つがあります。
工事現場でウェアラブルカメラが注目される背景
一つ目は、国土交通省が公共工事において遠隔臨場の活用を推進していることです。
遠隔臨場とは、ウェアラブルカメラなどで取得した映像・音声を使い、遠隔地から段階確認・材料確認・立会などを行う仕組みのことです。特に大規模な工事現場や複数の現場を統括する場合に有効とされており、施工状況の確認性や透明性の向上が期待できます。
遠隔臨場にウェアラブルカメラを活用すれば、工事現場の映像をリアルタイムで共有できるため、本社や管理者から適切な指示を即座に受けることが可能です。
国土交通省が2023年(令和5年)3月に公表した「建設現場における遠隔臨場に関する実施要領」でも、ウェアラブルカメラ等が、動画撮影用カメラの例として示されています。
参照:国土交通省「建設現場における遠隔臨場に関する実施要領(案)」
https://www.mlit.go.jp/tec/content/001594449.pdf
i-Constructionは、2016年から国土交通省が進めているプロジェクトで、ウェアラブルカメラが注目される背景の一つといえます。
国土交通省近畿地方整備局では、i-Constructionの定義を以下のように定めています。
i-Construction とは、ICT の全面的な活用施策(ICT 土工等)を建設現場に導入することによって、建設生産システム全体の生産性向上を図り、もっと魅力ある建設現場を目指す取り組みです。
引用:国土交通省近畿地方整備局 i-Constructionモデル事務所(豊岡河川国道事務所)「i-Constructionとは」
https://www.kkr.mlit.go.jp/toyooka/bimcim/03_whaticonstruction.html
i-Constructionでは、主に以下の取り組みが進められています。
i-Constructionの主な取り組み
ウェアラブルカメラの活用は、ICTを活用して建設現場の生産性向上を図る流れと親和性があります。
建設DXとは、建設業界の業務や現場管理にデジタル技術を取り入れ、業務プロセスの効率化や変革を図る取り組みです。現状ある課題を解決し、効率化・自動化するだけでなく、デジタル技術を活用して業務や事業のあり方そのものを変革していくことが、建設DXの本質です。
工事現場でDXやデジタル化を進める手段の一つとして、ウェアラブルカメラが挙げられます。ウェアラブルカメラによって現場の状況をリアルタイムで確認できるようになれば、現場の課題を遠隔地からでも把握でき、適切な指導を行うことが可能となります。熟練技能のデジタル化が進めば、生産性向上や非接触・リモート型の業務体制への移行にもつながります。
ウェアラブルカメラは、主に以下の3種類に分けられます。
ウェアラブルカメラの種類
それぞれの特徴を押さえて、工事現場の用途に合うタイプを検討しましょう。
技術者や作業員の耳に掛けるタイプを、ヘッドセット型といいます。作業員の目線に近い位置で撮影しやすく、作業員の視界を遮ることはありません。また、耳に掛けるだけなので、着脱も簡単で機動性が高い点も特徴です。
小型ながら音声のやり取りができるタイプもあり、ハンズフリーでリアルタイムにコミュニケーションを取れます。
ヘルメット型は、作業員のヘルメットに取り付けるタイプのウェアラブルカメラです。両手を自由に使えるため、安全性が高い点が特徴です。ヘルメットは防護具として機能するため、作業員の安全を確保しつつ撮影することができます。
ヘルメットにヘッドストラップを固定して、アダプターを介してウェアラブルカメラを差し込んで装着します。製品によっては、既存のヘルメットに取り付けられるものもあります。
メガネ型のウェアラブルカメラも、工事現場で用いられるタイプです。一般的なメガネをかける要領で装着できるので、高さや角度など、作業員の目線に近い映像を共有しやすい点が特徴です。
製品によっては視界の一部が覆われる場合があるため注意が必要ですが、片目のタイプであれば視界を確保しながらカメラを使用できます。
ウェアラブルカメラを工事現場で活用することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。主な6つのメリットを、以下にまとめました。
ウェアラブルカメラを工事現場で利用する6つのメリット
すでに説明したように、ウェアラブルカメラを使えば工事現場の状況をリアルタイムで確認可能です。
工事現場の管理者・監督者・担当者は、定点カメラでは確認できない細部の情報をウェアラブルカメラで把握できます。これにより、進捗状況や問題点などを正確に把握し、適切な指示を出しやすくなります。
工事現場でウェアラブルカメラを使えば、作業や確認業務の効率化に加え、安全性の向上も期待できます。
ウェアラブルカメラを通して工事現場の映像を、遠隔地の担当者に送信すれば、現場で発生している問題に対して、すぐに確認や指示を受けられます。これにより作業効率が大幅に向上し、問題解決の速度も上がるでしょう。また、危険な状態を即座に認識して対応することも可能です。事故発生前に予防策を講じていれば、技術者や作業員の安全性の向上にも寄与します。たとえば、作業員が装着したウェアラブルカメラの映像を通して、危険につながる行動の是正につなげられます。
ウェアラブルカメラの遠隔臨場によって、管理者・監督者・担当者は工事現場に出向く回数を減らせるため、時間を有効活用できるようになることもメリットです。
指示出しや作業確認のために訪れていた工事現場への移動時間が削減できるのはもちろん、そうした行動を待つ現場作業員の待機時間も短縮できます。大規模な現場や複数の現場を抱える管理者・監督者は特に、遠隔地から指示を出せるため、作業効率の大幅な向上につながります。
建設業界を取り巻く人材不足の問題に対しても、ウェアラブルカメラの活用は有効な対策の一つとなる可能性があります。建設業界では、工事現場での人材不足や生産性の低さ、そして現場技術者の長時間労働などが問題となっています。
ウェアラブルカメラによって、技術者が現場に赴くことなく現場を把握できることで、オフィスワークと並行して指示を出せるようになります。これまで移動にかかっていた時間を別の業務に充てられるので、生産性を向上できるでしょう。
また、関係部署が必要に応じて現場の状況を遠隔から確認しやすくなります。これによって、現場の状況に対して迅速な対応が可能となり生産性が高まり、限られた人員で効率的に作業を進められます。
ウェアラブルカメラは身体に装着して使用するため、撮影しながら両手を自由に使えます。ウェアラブルカメラで撮影しながらでも、作業員は作業に集中でき、管理者・監督者・担当者は臨場感のある映像で現場の状況を把握できるのです。
特に高所での作業時には細心の注意を払う必要がありますが、両手を空けられるウェアラブルカメラであれば、安全性の向上にもつながります。
ウェアラブルカメラは、工事現場での新人教育にも活用できます。
ベテラン管理者や監督者が現場に出向かずとも、ウェアラブルカメラの映像を通して新人作業員の手元の映像を見ながら指示を出して、サポートすることが可能です。人材不足で「現場で直接教育できない」という、工事現場によくある課題の解決に役立ちます。
ウェアラブルカメラを導入することにはさまざまなメリットがある一方で、使用時には注意しておきたいポイントもあります。以下に挙げる注意点を押さえたうえで、使用しましょう。
工事現場でウェアラブルカメラを利用する際の注意点
ウェアラブルカメラを管理者や作業員が使用する前に、操作に関する研修を実施してください。より効果的にウェアラブルカメラを活用するためです。
対象者は、工事現場で実際に装着する作業員や、遠隔地でデータを取り扱う担当者などです。研修を実施するには、事前準備が必要となります。マニュアルの作成や規則の策定などは事前に対応しておき、導入にあたってトラブルが発生しないように計画を立てましょう。
ウェアラブルカメラは、単に導入しただけでは効果が得られない可能性があります。カメラ本体だけでなく、通信設備やモニターなどを導入して、映像や音声を安定して共有するための環境を整備しなければなりません。
導入する設備や規模にもよりますが、一定のコストがかかります。また、遠隔地で現場の確認やデータの管理などを担当する人員も別途用意する必要があり、リソースの確保も必要になると認識しておきましょう。
ウェアラブルカメラを操作する際は、意識が操作に集中することで事故リスクが高まります。端末や機器の操作に気を取られると、転倒をはじめとする事故につながるおそれがあるため、操作しながら移動しないことをルールとして定めておきましょう。
また、指示側も、技術者や作業員が移動している際には撮影の指示を出さないことを事前に徹底しておくことが大切です。周囲の環境に十分注意したうえで、状況に応じて一時的に撮影を中断する判断も必要となります。
ウェアラブルカメラは、遠隔臨場の実施や建設DXの推進を目的に導入する性質上、映像に現場関係者や従業員が映り込むことは避けられません。そのため、事前に現場関係者や従業員に対する配慮が必要です。
前もって同意を得ることはもちろん、プライバシー保護のための規程を設けることが必要となります。また、ウェアラブルカメラを導入する目的やメリットも伝えておくことで、「監視されているようだ」といった否定的な声を抑えやすくなります。
ここでは、国土交通省が公表している事例のなかから、実際に工事現場にウェアラブルカメラを導入したケースを紹介します。
令和元年に試行された138号BP須走1号高架橋鋼上部工事では、現場作業員にウェアラブルカメラを装着させ、高力ボルトの現場予備試験が行われました。受注者・発注者側の良かった点と悪かった点の意見を、以下にまとめました。
高力ボルト現場予備試験での効果・課題
| 良かった点 | 悪かった点 | |
|---|---|---|
| 受注者 |
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| 発注者 |
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参照:国土交通省「建設現場における映像活用事例」
https://www.cbr.mlit.go.jp/architecture/kouritsuka/data/eizou_jirei_01.pdf p2
同じ資料では、23号玉垣北地区道路建設工事において、鋼矢板打込高の段階確認作業時にウェアラブルカメラを活用した事例も紹介されています。本工事では、主に以下の意見が集まっています。
鋼矢板打込高の段階確認での効果・課題
| 良かった点 | 悪かった点 | |
|---|---|---|
| 受注者 |
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| 発注者 |
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参照:国土交通省「建設現場における映像活用事例」
https://www.cbr.mlit.go.jp/architecture/kouritsuka/data/eizou_jirei_01.pdf p3
また、コンクリート吹付工出来形・材料寸法・状況報告において、ウェアラブルカメラを活用した事例も紹介されています。受注者・発注者から集まった意見は、以下の通りです。
コンクリート吹付工出来形・材料寸法・状況報告での効果・課題
| 良かった点 | 悪かった点 | |
|---|---|---|
| 受注者 |
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| 発注者 |
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参照:国土交通省「建設現場における映像活用事例」
https://www.cbr.mlit.go.jp/architecture/kouritsuka/data/eizou_jirei_01.pdf p4
実際に工事現場にウェアラブルカメラを導入する場合には、以下の流れで進めるとよいでしょう。
ウェアラブルカメラを導入する際の手順
まずは、ウェアラブルカメラを導入する目的を明確にしましょう。具体的にどのシーンで活用するのか、また導入することでどのようなメリットがあるのかを洗い出しておきます。
明確化した目的を踏まえて、関係者との協議の場を設けます。導入にあたって必要なコストや整備すべき運用体制について議論して、関係者の合意を得ることが重要です。
関係者の合意が取れたら、導入する製品を選定します。ひと口にウェアラブルカメラといっても、その種類はさまざまです。
工事現場のニーズに沿って、最適な製品を選べるようにあらかじめリサーチしておきましょう。ウェアラブルカメラの機能や価格帯、そして耐久性などを比較検討することが大切です。
関係者間で結論が出ない場合は、サプライヤーや専門業者といった有識者からアドバイスを受けることも有効です。
最適な製品を選定できれば、工事現場への導入の準備に取り掛かります。
導入時には、ウェアラブルカメラを装着する現場の技術者や作業員に対するトレーニングが欠かせません。ウェアラブルカメラの基本操作やデータの管理方法、使用時の注意点を理解できるように情報を漏れなく共有しましょう。
ここまでの準備が整えば、試験的な運用へと段階を移します。
この段階では、実際の工事現場でウェアラブルカメラを装着して使用してもらい、問題点や改善点を洗い出します。試験運用の期間中に得られたデータを基に、現場の調整や関係者へのトレーニングを再度実施してください。
試験運用を経て大きな問題がなければ、本格的に導入していきます。
本格導入は、現場の全スタッフがウェアラブルカメラを使用でき、運用体制が整っている状態でスタートすることが大切です。
本格導入後も、ウェアラブルカメラの効果を最大限に引き出すには定期的なメンテナンスが必要です。機器のメンテナンスでカメラの性能を最適な状態に保ちつつ、ソフトウェアのアップデートを行うとともに、データ損失に備えてバックアップ体制も確認しておきましょう。
ウェアラブルカメラで得たデータに対する、セキュリティ対策も忘れず実施してください。
工事現場で収集したデータには機密情報を含むことも多いため、データの暗号化やアクセス権限の制限といった対応は欠かせません。情報漏えいのリスクを防ぐためにも、必要なセキュリティ対策を講じておきましょう。
では、工事現場のニーズに即した最適なウェアラブルカメラを選ぶには、どのような視点を持つとよいのでしょうか。最後に、ウェアラブルカメラを選ぶ際の3つのポイントをお伝えします。
ウェアラブルカメラを選ぶ際のポイント
工事現場での作業はさまざまな負荷がかかるため、その過酷な現場環境に耐えられるものを選ぶ必要があります。具体的には、操作性、防塵・防水性能、手ブレ補正機能などを確認したうえで選ぶとよいでしょう。
工事現場では、技術者や作業員が作業しながらでもカメラを使用できることが前提条件となります。手元の動きの邪魔になったり、操作しづらかったりするものは選ばないことをおすすめします。
ウェアラブルカメラは工事現場の映像を通して、遠隔地からの指示を受けることもあるため、双方向の通信・通話が問題なく行えるかどうかも重要なポイントです。音声や映像が切れてしまったり、解像度が低かったりすると、ウェアラブルカメラを有効に活用できない可能性があります。
ウェアラブルカメラの仕様やデモ、試用時の映像・音声品質を確認して、双方向の通信・通話をスムーズに行える機種かどうかを見極めましょう。
ウェアラブルカメラや遠隔臨場システムの費用は、カメラ本体の購入・レンタル、通信環境、クラウド利用料、契約期間などによって大きく異なります。本体のみを販売しているのか、あるいは本体と月額配信サービス料をセットで販売しているのかなど、料金体系もさまざまです。導入前には、初期費用だけでなく、月額費用や保守費用、通信費も含めて比較することが重要です。
現場の技術者が1人1台使用するなど、1つの工事現場で複数のウェアラブルカメラが稼働することも工事現場の規模によっては珍しくありません。必要な台数を適正なコストで用意できるよう、複数社の見積もりと比較し、費用が妥当かどうかを確認しておくことをおすすめします。
ウェアラブルカメラは、身体に装着して工事現場の状況を撮影できる小型カメラです。技術者や作業員が身体に装着して使用することで、現場の状況を映像でリアルタイムに共有でき、遠隔地からでも指示を受けられます。
公共工事でも遠隔臨場の活用が進むなか、工事現場の映像共有や遠隔支援を強化したい方は、ジャパンメディアシステム株式会社が提供する「LiveOn Wearable」をご検討ください。映像や音声が途切れにくい通信安定性を備えているため、屋外の工事現場でもスムーズに活用いただけます。また、電源ONのみという操作の簡単さ、現場支援に特化した機能が充実しているため、多くの現場で採用されています。
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